一般社団法人 日本タトゥーイスト協会

タトゥー施術行為の定義

タトゥー施術行為の定義に関するアンケートにご協力いただきまして、誠にありがとうございました。アンケートの実施結果を踏まえ、当協会としては、下記の定義を採用することといたします。

「タトゥー施術行為とは、針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為のうち、美術的な目的で、絵画、文字、記号、文様等を描く行為(施術箇所に本来存在しうる人体の構造物(眉毛、毛髪、乳輪・乳頭等)を描く行為及び化粧に代替しうる装飾(アイライン、チーク、リップ等)を描く行為を除く。)をいう。」

また、アンケートにおいてお寄せいただいたご意見をもとに、上記の定義に関するQ&Aを作成しましたので、あわせてご確認いただけますと幸いです。なお、Q&Aについては、今後とも必要と考えられる内容を追加していく予定です。

1 「美術的な目的」とあるのは「芸術的な目的」とすべきである。 「美術的」と「芸術的」の違いは微妙なところがありますが、「芸術」が美術、文学、音楽など広い範囲の表現を指すのに対して、「美術」は、「芸術」のなかでも絵画、彫刻などの視覚表現を対象に用いられることが多いと思われ、一般的に絵画などの表現であるタトゥー施術行為になじむ用語として「美術的な目的」としております。
2 技術的にアートメイクとタトゥーとの差異を感じませんし、タトゥーであれアートメイクであれ、知識や技術に乏しい者が施術すること自体が問題で、明確に分け隔てるのは難しいと思います。 ①タトゥー施術とアートメイクを区別することは困難であるとの趣旨のご意見や、②区別する必要性・理由がわからないとの趣旨のご意見を複数いただきました。
①については、タトゥー施術行為が医行為に該当するか否かを巡って議論がなされたいわゆる「タトゥー裁判」の判決に照らし、タトゥー施術行為とアートメイクを区別することは可能と考えられます。「タトゥー裁判」において、第1審の有罪判決を覆して無罪判決を言い渡した大阪高裁判決は、「アートメイクは、美容整形の範疇としての医行為という判断が可能であるというべきである。(略)医療関連性が全く認められない入れ墨(タトゥー)の施術とアートメイクを同一に論じることはできない」(判決文23頁)と述べて、タトゥー施術行為が医行為に該当しないこととあわせて、タトゥー施術行為とアートメイク(こちらは医行為に該当する)は明確に別のものであるとの判断を示しています(下記リンク先にも判決文が掲載されていますので、是非ご覧ください)。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/172/088172_hanrei.pdf
②については、アートメイク(繰り返しとなりますが、大阪高裁判決で医行為に該当すると明言されています)の施術であるにもかかわらず、「これはタトゥー施術なので、医行為には該当しない」として、医師法の規制を免れようとする動きがあるとの情報が寄せられています。医師でない者がアートメイクの施術を行うことは、医師法に違反する行為ですので、逮捕・勾留されて刑事罰を受ける可能性があります。そのように、「タトゥー施術である」と称しながらも実際はアートメイクの施術であるといった行為が横行するのを防ぐためには、タトゥー施術行為とはどのような行為を指すのか、具体的にタトゥー施術行為の内容を明示した定義を設けて、タトゥー施術行為とアートメイクの区別をしやすくすることが有効と考えられます。そこで、当協会では、厚生労働省医政局医事課の照会を受け、タトゥー施術行為について定義案を策定し、今般、その定義を採用するに至りました。
3 アート、芸術というものを法律の文章だけで区別することが難しいように思います。タトゥーのそれであってもアクセサリーの感覚でやっているのか威圧または強さかのようにしてるような人もいるように見えます。それをどちらかなのかというのを言葉のみで切り分けできるのかというと微妙。人によっては威圧ではないというのもありますし。多くがそう思うかどうかぐらいの内容を法律や判例だけで良し悪しを決める難しさかと思います。
4 分けることで何かが変わるのでしょうか?分けることの意味を教えてほしいです。
5 個人の考え方によって決めることであると思う。
6 タトゥーは自己責任で何も悪くないと思います。
7 アートメイクもタトゥー施術に含まれると思います。
8 ①アートメイクとタトゥー施術は行為自体同じ色素を入れる行為なのに医療行為とするにはタトゥー裁判の判決に反すると思います。②またアートメイクは医療行為とクリニック側が喧伝している事に違和感を感じます。③また彫師側もタトゥー裁判に至った経緯からアートメイクに嫌悪感を持っている彫師も多いと思いますが感情論で進めるべきではないと思います。 ①および③については、質問2ないし7への回答をご参照ください。

②については、①でも触れております大阪高裁判決は、タトゥー施術行為とアートメイクを明確に分けており、両者が別のものであることは法律上明確になっていると考えられます。大阪高裁判決は、アートメイクは医行為に該当するとの判断を示していますので、クリニックがアートメイクを医療行為として取り扱うことは何ら問題がなく、むしろ、大阪高裁判決が示した判断に沿うものと考えられます。
9 ①どこまでがアートメイクで、どこまでがタトゥーかという区分けは非常に困難であると思います。②先天的脱毛症の方の毛髪(毛穴等)、乳房切除した方の乳輪等を描く等の行為は、芸術的なタトゥーよりも施術を望んでいる方の救いになると思いますし、ある意味タトゥーより役に立つ行為であると思います。③技術的にも針先に色素を付けて皮下に注入することに相違無いわけで。④顔への施術も珍しくなく、これらを明確に分けるのは難しい。 ①及び③については、質問2ないし7への回答をご参照ください。
②に記載された事例は、アートメイクに該当すると考えられます。
④については、顔への施術の具体的内容に着目して、タトゥー施術行為なのかアートメイクなのかを判断する必要があります。今般当協会が採用するタトゥー施術行為の定義によれば、それが「施術箇所に本来存在しうる人体の構造物(眉毛、毛髪、乳輪・乳頭等)を描く行為」または「化粧に代替しうる装飾(アイライン、チーク、リップ等)を描く行為」である場合は、アートメイクに該当すると考えられます。他方、それが「美術的な目的で、絵画、文字、記号、文様等を描く行為」である場合は、タトゥー施術行為に該当すると考えられます。両者の区別が困難な場合もあるかもしれませんが、今後、さらに事例研究を積み重ねてまいりたく存じます。
10 タトゥーイストが施術する場所が乳輪や乳頭等が含まれた場合はどう考えるべきでしょう? タトゥー施術行為とアートメイクの区別は、施術場所が「乳輪や乳頭等」かどうかといった、施術のなされる人体の部位で判断されるものではありません。今般採用したタトゥー施術行為の定義において、アートメイクに該当する例としてあげられているのは「施術箇所に本来存在しうる人体の構造物(眉毛、毛髪、乳輪・乳頭等)を描く行為」です。その施術場所に乳輪・乳頭等が含まれたとしても、施術行為が「美術的な目的で、絵画、文字、記号、文様等を描く行為」であって(乳輪・乳頭等の)「施術箇所に本来存在しうる人体の構造物を描く行為」や「化粧に代替しうる装飾を描く行為」でなければ、アートメイクに該当するものではないと考えます。
11 反社会的目的ではない、というような1文があるとタトゥー掘りやすいです。 質問2ないし7への回答に記載のとおり、今般、タトゥー施術行為の定義を策定した目的は、タトゥー施術行為とアートメイクを区別することにあります。反社会的目的か否かという内心の状態を基準にタトゥー施術行為を定義することは困難であり、あくまでも外形的にみて判断ができる基準として定義を策定しております。なお、当協会は反社会的勢力との関係の排除を宣言しており(協会規約「2 基本原則」第6項)、また、会員の皆さまにも反社会的勢力と関係しないことを求め、反社会的勢力との関係排除を会員の資格としています(会員規程第11条、第14条)。